shisouhan’s blog

人間と技術との関係について、思っていることを書いています。

現実はOFFできない

VRとイヤホンは似ていると思う。どちらも、現実を遮断して非現実を楽しむものだ。いま目の前にあるものを見ることなく(聞くことなく)、作られた世界を楽しむことができる。そのうち、鼻の穴にはめて四六時中好きな香りだけ嗅げる、「ノーズキャップ」なるものが出るかもしれない。売れるかは分からない。

そのような技術が発展すれば、あらゆる疑似体験が全感覚へのリアルな刺激を伴って楽しめるようになるのかもしれない。例えば、疑似体験で山登りをするとする。木々の姿も、鳥のさえずりも、足裏に感じる傾斜の感覚も、すべてリアルに再現されるだろう。山に行くためのコストもなく、疲れたならば一時停止をしてソファで休憩すればいい。途中で山頂の高さをレバーで調整しながら。

先日、現実の山に登ってきた。わざわざ交通費を払って、それなりの時間をかけて。ぬかるみで足は汚れ、休憩しようにもベンチもそうない。気付かされたのは、現実はOFFできないことだった。それでも、そんな道を進ませてくれる丈夫な靴があり、この山にまで連れてきてくれた交通網がある。山頂にたどり着いて、クーラーボックスで冷やしておいたビールを飲む。ここ最近で一番楽しかった。

現実も楽しい。それを楽しませてくれるための技術もある。